『棒の哀しみ 前編/後編』

DVDで。

『棒の哀しみ 前編/後編』

2016年/コンセプトフィルム、エクセレントフィルムズ、オールインエンタテインメント
原作:北方謙三/監督・脚本:伊藤秀裕
出演:加藤雅也大鶴義丹、神保悟志団時朗、中丸シオン、井上奈々、竹崎綾華、高嶋香帆内山理名(特別出演)

あらすじ:

 50を過ぎた中年ヤクザの加藤雅也は、若い頃から真面目にでかい仕事をして、お勤めなんかもバッチリ終えて、それなりに偉くなったと言うのに、年甲斐もなく街のヤンキーに因縁つけてボコボコにしてやったりするしょっぱい毎日。野村監督みたいなボヤキがすっかりくせになってしまって、女の前でもぼやぼやぼやぼや、部下の前でもぼやぼやぼやぼや……。おまけに、団時朗組長から独立を言い渡され、これじゃあ跡目を継がせて貰う可能性は絶望的じゃねぇかよ……ぼやぼや、ぼやぼや……

 神代辰巳監督の遺作(未見)をVシネで弟子の伊藤秀裕監督がリメイク。しかし安い。オリジナルはどうだか知らないが、安い。せっかく加藤雅也がメガネかけたり老けメイクしたりして役作りしているのに、なぜ安い。それはおそらくビデオ撮りだから。フィルムで撮っていたらさまになったかもしれないのに、こう画面が安いと、師匠譲りだというワンシーン・ワンカット演出がギャグのないコントみたいになってしまう。男の深みの極致であるべきハードボイルドなモノローグが、嫌味なおっちゃんのぼやきにしか聞こえなくて超残念。前後篇合わせて2時間半くらいあるのに、ダレダレな場面と展開の早すぎる場面とが交互にやってきて、ハードボイルドなのか、単にやる気がないのか判断しかねる。


 おまけに、監督には変なところに妙なこだわりがあるらしく、白シーツの上に敷かれた赤いバラの花びらの上で躍る女の裸体……というアメリカン・ビューティー』をぬるま湯で薄めたみたいな場面をスローモーションでたっぷり見せられる。あまり撮影に時間もかけてなさそうなのに、なんでここだけ……だったら他のシーンも過剰に退廃的なムードで演出すればよかったのに。


 製作は、かつて東映が誇ったやくざ映画、ヤンキー映画をこの現代にひたすら量産し続けるオールイン エンタテインメント。だいたい旬を過ぎた俳優さん、女優さん、または芸人さんが出ている低予算作品が多い。この映画では序盤で特に意味もなく絡んでくる内山理名の意味なくデカい存在感など、見どころと言えば見どころなのかもしれない。

 

 そしてこのオールインのすごいところは、デビューしたばかりの素人若手俳優、および一般の映画やドラマでは女優扱いしてもらえないAV嬢やグラドル見境なく主演級に起用するので、たまにものすごい才能を発掘してしまうところだ。今回の場合だと、美脚時代」とかいう少女時代のパチもんアイドルをやってたモデル井上奈々と、グラドル高嶋香帆。こんなに魅力あふれる才能が今までどこで眠ってたんだよと、名前を見て思わず俺が経歴を調べてしまうぐらい(ヘタクソだけど)魅力的だった。特に例の「アメリカン・ビューティー」をやらされる井上奈々は、「このままでは世に出る前にポシャってしまう。もう後がないのよアタシ!」という気持ちでやっているのか。それとも、「年も年だし、今から女優になるためには脱ぐしかないのよ」と言いくるめられたのか。どっちにしろハードコアな業界の一端を垣間見たような思いだ。

 

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