『㊙︎色情めす市場』

シネマヴェーラ渋谷芹明香芹明香ある、にて

『㊙︎色情めす市場』

1974年/日活
監督:田中登/ 脚本:いどあきお
出演:芹明香宮下順子花柳幻舟萩原朔美絵沢萠子

あらすじ:

 大阪のスラム・釜ヶ崎で暮らす芹明香は、親子2代で売春稼業。店には勤めておらず、ガード下を行き交う男に声をかけて歩く。そして汚いおっさんに抱かれたあとは、知的障害のあるかわいい弟(ネットスラングで言うところの”パワー系”)に近親セックスボランティア宮下順子がヘタレ男の萩原朔美と街に流れ着いてきようと、母ちゃんがまたガキを作ろうと、会った男が指名手配の顔に似ていようと、芹明香には関係ない

 

 

 芹明香は店を持たない所謂立ちんぼなので、場所を選ばずセックスをさせられる。連れ込み旅館なら壁と天井があるだけまだマシなほうで、彼女のお気に入りの場所は汚いビルの屋上。理由は人が来ないから。薄い服を敷いているだけで、背中がとても痛そうだ。おまけに家庭の事情が壮絶である。親父が誰かもわからず、母親と同じ道を選ぶより仕方のない環境。親を選べぬ子の悲しさ、なんという人生ハードモード。ポルノ映画なのに全然抜けない。俺が日活の社長なら監督の田中登を呼び出して小一時間説教でもしてやりたいところだ。そもそも女の人が痛がっていたり嫌がっているのを無理矢理どうこうしようとするシーンは個人的にすごく萎える。まあでもこの世には凌辱趣味という需要もあるらしいから、人によってはものすごく抜ける映画なのかもしれないが……。

 

 しかし救いなのは、芹明香が必ずしも不幸な顔をしてばかりではないということだ。晴れた空の下、ゴミ溜めのような場所でクルクルと気持ちよさそうに回る芹明香とヒラヒラとはためくキャミソール(?)の裾を見ているだけで、救われた気持ちになる。最低最悪の環境で選択肢を与えられずに生きている彼女には、また思いつめて死ぬなどという選択肢もないわけだ。これ不幸中の幸い。泥沼に咲く花だ。

 

 目の前でエロいシーンが展開しているのにまったくその場に参加したくないという胸糞の悪さを感じつつ、ときに気だるく、ときにやさしい芹明香の表情に魅了されてしまう。これが日本の娼婦じゃなくてイタリアの貧乏農家の娘だって成立しそうな話で、ほぼ全編がモノクロだということも含めて、ポルノ映画というよりはアート系の映画として満足してしまった。そして監督を呼び出して説教する話に戻るわけだが、とりあえず言いたいことをひとしきり言った後で、「ま、これからは気をつけるんだな。じゃ、帰ってよろしい」とあっさり許さざるをえないだろう。

 

 宮下順子は終始困り顔で、下がった眉が大変かわいらしい宮下順子が不安な顔をしていたり、悲しい顔をしているだけで、どうしてこんなに胸が締め付けられるのだろうか。声のせいだろうか。豊満な肉体はガリガリである芹明香のそれとつい比べてしまうほどで、チンコに真珠を入れたヤクザにイカされる場面はこの映画唯一のオアシスだった。ところで最近観た別の映画でも「アソコに真珠を仕込んだ」というセリフを聞いたはずなのだが、思い出せず。デジャヴかな。

 

 劇中、池の周りに集まるおっさんたちの姿が何度も映る。コンドームとビール瓶で遊んでいるようにしか見えなかったのだが、どうやらあれ、使用済コンドームを洗っているらしいのだ。きっとその後で丸め直して売春宿に収めるのであろう。いくら汚い街だとしても酷すぎる。不衛生極まりない。そんなわけで、日本一治安の悪い街でのゲリラ撮影から来る画面の緊張感もすごかった。街を歩く芹明香を望遠で捉えたカットが何度かあるのだが、ゲリラ撮影なので当然汚い姿をしたリアルスラム住人たちがたくさん写り込んでおり、何人かのおっさんたちは芹明香を見てチラリと振り返るのである。ガチの商売女だと思って今にも襲いかかってきそうな雰囲気が、画面に現れていた。

 

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