『今夜は踊ろう』

シネマヴェーラ渋谷、デビュー50周年記念 映画特集 荒木一郎の世界にて

『今夜は踊ろう』

1967年/大映東京 
監督:弓削太郎/脚本:笠原良三
主題歌:「今夜は踊ろう」作詞・作曲・唄:荒木一郎(ビクターレコード)
出演:田宮二郎荒木一郎、梓英子、清水将夫平井岐代子、夏圭子、渚まゆみ

あらすじ:

 寿司屋の2階でバー「PAL」を経営するプレイボーイ・田宮二郎は、昼間は昼間でホットドッグ屋を経営する働き者。営業妨害に来たチンピラグループをボッコボコにしてやったら、メンバーのひとり・荒木一郎がなんと大学の後輩だったことが判明し、更生させてやることに。働き者な上に情に厚くて面倒見のいい田宮二郎は、別の店のマダム・夏桂子から、パトロンというかスケベな重役清水将夫)に店を取り上げられて自殺未遂したお友達の話を聞かされ憤慨。清水将夫の娘・梓英子がバーの顔馴染で田宮二郎を慕って家出してきたのを利用し、荒木一郎に彼女の面倒を見させつつ、店を取り返そうと奮闘する。

 

 

 田宮二郎の口添えで店を移ることになった訳ありホステス・渚まゆみが思わせぶりに登場したのに話にまったく関係せず、とか、寿司屋の獅子てんや・瀬戸わんやが唐突に漫才を始め、それまでテンポよく動いていたカメラが突然しばらく止まったままになる、とか、露骨な尺稼ぎ、意味のない演出が逆に印象に残る。同じ弓削太郎監督の『女は抵抗する』に続きタイトルデザインを柳原良平がやっているが、「タイトルデザイン」という発想があるのが当時の映画にしてはちょっとオシャレかな程度。服部克久の音楽が夜の店が似合う感じのいわゆるジャズ、ラウンジで、昔ながらの電気オルガンの音が印象的だった。

 

 田宮二郎のバーにホステスの役で賀川ゆき絵の姿が(改名前の「西尋子」名義)。でもセリフはひとつだけ(客の注文を受けての「オレンジジュース!」だったかな)だし、画面にもほとんど映らないのでだからどうしたレベル。ただ、この数ヶ月後には東映に移籍して改名し、石井輝男監督の『徳川女系図』おっぱい出して女相撲をやっているのかと思うと……うーん。それから田宮二郎のバーの名前は「PAL」。10数年後に荒木一郎がプロデュースをするニューミュージック・バンド「PAL」と同じ名前だ。

 

 そういえば、「荒木一郎特集」だというのに、主演といえばロマンポルノの『白い指の戯れ』とか、洋ピン女優のクリスチナ・リンドバーグと共演した『ポルノの女王 にっぽんSEX旅行』ぐらいで、基本的には常に脇役。とにかく器用な人で、この特集に通って何本も観ているのに、どれ1つとして同じ演技をしていない。そりゃ役柄が違うんだから演技だって毎回違って当たり前、なのは確かに正論。しかしこの時代の日本映画は5つの映画会社が週に2本のペースで新作を公開していたわけだから、質よりも量をこなさなければならない俳優さんたちは主演級から脇役に至るまで同じような役を同じように演じ続けていた。それは全員がキムタクみたいなもんで、画面に出てくるだけでそれがどんなキャラクターなのか、映画を見慣れて顔を覚えると、即座にわかってしまうのである(もちろんそうでない俳優もいる。主に仲代達矢ら劇団系の俳優さんなど)。その点、荒木一郎は母親が女優だった関係で文学座にいたこともあったが、俳優として売れるより先にシンガーソングライターでブレイクした人なので、どちらかと言えば、ピエール瀧リリー・フランキーのように、本業の俳優さんじゃないのに異常な存在感があって主役を食ってしまう人、というイメージが近い。作品を追いかけていくうちに、あの薄い顔がクセになる。

 

 ところで大らかなでフリーダムな金持ちの家出少女を演じた梓英子は、この映画の3年前、ピンク映画『青い乳房の埋葬』で主演デビューしていたすごい経歴の女優で、大映の専属女優として活動するにあたってもちろんその過去は封印された。画像検索するとトップレスの女が縛られてる場面写真が出てくるすごい映画のようだが、この映画を観ている限りはとてもそんなハードコアな女には見えない。さぞかしギャップ萌えがすごかったことだろう。

 

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