『東京のバスガール』

同じく、ラピュタ阿佐ヶ谷にて

『東京のバスガール』

1958年/日活
監督:春原政久/脚本:西島大
主題歌:「東京のバスガール」作詞:丘灯至夫、作曲:上原げんと、唄:コロムビア・ローズコロムビアレコード)
出演:美多川光子、石丘伸吾、コロムビア・ローズ、柳沢真一、小沢昭一西村晃、有木山太、内海突破、山田禅二

あらすじ:

 チエ子は観光客に東京の名所をハキハキと紹介する新米バスガイド。バスの整備をしている学生バイトの彼氏もいるし、同僚には歌うバスガイド・初代コロムビア・ローズがいます。ある日、インチキくさい客A・柳沢真一に突然求婚され、拒否った瞬間図々しくもレイプ! 偶然彼氏が通りかかって無事未遂に終わりましたがチエ子の災難は続きます。インチキくさい客B・内海突破にストーキングされるわ、インチキくさい電気屋・小沢昭一が大量の扇風機とクーラーを売りつけてくるわ、インチキくさい不動産屋・西村晃土星の土地で大儲けしないかと押しかけてくるわ……それもこれも、見ず知らずのはずのチエ子に「3億円を相続させる」という大富豪の遺書が見つかったと新聞が書きたてたからなのでした!


 

 いわゆる歌謡映画です。製作当時の感覚としては、初代コロムビア・ローズがヒット曲「東京のバスガール」を歌うよ! ということだけが売りのつまらない映画、というところでしょう。ところが50年の歳月は不思議なもので、タイトルバックで建設途中の東京タワーが映っただけで、『三丁目の夕日』が束になっても叶わない価値が産まれてしまいました。新人女優に曲者俳優・曲者芸人が次々と食ってかかるところも、柳沢真一以外はみんな死んでしまったので芸能の歴史的に貴重なものです。

 

 施設育ちで身寄りなしという設定のチエ子が施設の子どもたちをバスに乗せて東京観光をする場面があるのですが、子どもたちはどういうわけか全員吃音で、完成したばかりの国立競技場で聖火台を見上げて一斉にしゃべりだすカットは現代では間違いなく再現不可能。妙に緊張感のある画面になっていました。これもいまの映画が失ったもののひとつです。

 

 最初はあっ、これはコント以下の学芸会だと落胆していたのですが、だんだんギャグに加速度がついてきて、思わぬワールドワイドな展開に声を出して笑うこともありました。デートの待ち合わせに来た彼氏が意味なく歌い出すミュージカル演出など、貧乏だけど幸せな雰囲気があってすごく好きです。しかも、初代コロムビア・ローズ以外の人が歌う場面はただそれっきりで、最後まで徹底してミュージカルにしていないその気まぐれでいい加減な感じもまた大らかな時代らしくて良かったです。