『四月の魚 ポワゾン・ダブリル』

『四月の魚 ポワゾン・ダブリル』

1984年(公開は1986年)/
ジョイパック・フィルム、アミューズシネマシティ、アルファレコード、オフィス・インテンツィオ、日本コロムビア、ピー・エス・シー
配給:ジョイ・パック・フィルム
原作・脚本:ジェームス三木
企画・監督・脚本・編集:大林宣彦/脚本:内藤忠
出演:高橋幸宏、今日かの子、赤座美代子泉谷しげる丹波哲郎入江若葉三宅裕司峰岸徹

あらすじ:

 かつて若き天才監督ともてはやされた高橋幸宏は、今じゃすっかり落ちぶれて、妻である年上のスタア女優・赤座美代子の現場に来てはちょっかいを出すヒモ野郎になっていた。
 自宅では本格的な具材を買い集めて、趣味のフランス料理作りを楽しみニート生活満喫中。そこへ、以前撮影で訪れた南方の島の酋長から「日本に行くので家に遊びに来たい」との手紙が届く。元首狩り族である彼らの風習では、客をもてなす時には妻を差し出すのが礼儀。そういえば僕もあっちへ行ったときは若ーい嫁さんと一晩を過ごしたっけ……なんて言ってる場合じゃない。このままでは妻が食われてしまう。相棒の脚本家・泉谷しげるに相談した結果、知り合いの劇団員の女の子に頼んで、その日だけ妻のフリをしてもらうことに。これで準備はOK。そして夜になり家にやってきたのは、真っ黒に日焼けして、インチキなフランス語と田舎弁の混じった言葉を話す丹波哲郎だった……。



 映画好き、パロディ好きを前面に押し出した大林宣彦監督の映画が好きだ。ギャグがスベってても決して照れたりしない、あの勢いが好きだ。
 主人公の映画監督が南方の島へ撮影に行っていた、という設定はこの直前に作られた原田知世主演の角川映画天国にいちばん近い島の撮影でニューカレドニアに行った大林監督の体験そのまんまで、フィクションの中に明らかなリアルを入れ込んで話に厚みを持たせてくる演出は大林監督が好んで使う手。そもそも俳優としては素人なはずの高橋幸宏が、フランス料理のウンチクを垂れる場面で妙に堂々としだすのも、彼のガチセレブな面をうまく役のキャラクターに取り入れることができているからだろう。劇中でスーダラウォーク(「スーダラ節」を歌うときに植木等がやるアレ)を披露したり、うろたえる、咳き込むといったベタな演技をさせたり(これがけっこう笑える)したのは、YMO時代から持っていたユーモアをすくい取ったところもあるかもしれない。
 高橋幸宏がヒロインの今日かの子とフランス料理を作る場面がひとつのクライマックスになっており、BGMで流れている主題歌の『四月の魚』と時々鼻歌をシンクロさせながら得意気に手を動かしていく一連の流れが非常に音楽的。なんでもないようなシーンかもしれないが、音楽と映像をミュージカル場面のように綿密に組み立てて行かないと成り立たない山場がいくつかあり、感動を覚える。実際その直後には唐突にミュージカルシーンもあり、意味なんかないのだがそのムード優先の姿勢がただひたすらに気持ちよい。
 テクノ・ポップの貴公子と過激派フォークのならず者が監督と脚本家で盟友を演じる組み合わせも面白いが、やはり登場シーンでは常にヒロインにセクハラをし続けている丹波哲郎の圧倒的な破壊力に尽きる。バブルの予告篇のような優雅で贅沢な雰囲気の浮かれたロマコメのなかに、唐突に戦争の話がぶっ込まれる展開もこの映画を忘れがたいものにしている大きなアクセント。『転校生』『廃市』もいいけど、やっぱりポップな意味ナシおふざけの連続のなかに突然真顔をぶち込んでくる水風呂、あるいは絶叫マシンではしゃぐ大林監督の演出が好きだ。

四月の魚
四月の魚
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高橋幸宏
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いまだにビデオとレーザーディスクだけでDVDになっていないレアな映画だが、サントラは今も発売中。ただ、セリフとBGMの絡みの気持ち良さを楽しむ映画でもあるので、映画の音をそのまま取り込んで聞くだけでもかなり楽しめると思う。ディスコの場面でかかる音楽なんて、丹波哲郎の高笑いが加わったほうが断然良い