『アマゾン無宿 世紀の大魔王』

『アマゾン無宿 世紀の大魔王』

1961年/ニュー東映
監督:小沢茂弘
脚本:松浦健郎
音楽:鈴木静一
出演:片岡千恵蔵進藤英太郎江原真二郎、梅宮辰夫、佐久間良子三田佳子、久保菜穂子、三島雅夫小沢栄太郎月形龍之介

あらすじ:

国際的な成長を続ける日本の賭博市場を我がものにするため、アメリカ、ブラジル、フランスの賭博組織がそれぞれ凄腕のギャンブラーを日本に派遣した。やってきたのはアメリカ代表・ゴールドラッシュの熊吉=進藤英太郎、ブラジル代表・アマゾンの源次=片岡千恵蔵、フランス代表・スペードのジャック=江原真二郎。みんな在外二世なので話す日本語はかなり怪しい。そのころ日本では、香港の大フィクサー月形龍之介謎の中国人秘書・久保菜穂子悪徳ホテル経営者・三島雅夫のトリオが、さらなる巨大新興宗教のトップ・小沢栄太郎に接近し、日本の市場を独占しようとしていた。梅宮辰夫と三田佳子の若いカップルに、エスタンガールスタイルの佐久間良子もやってきて、世界の覇者の座をかけた一大バトルが始まる!


 時代劇界のビッグ・ボス、片岡千恵蔵御大がブラジル帰りの日系人を胡散臭さ満点で演じるコントみたいな映画だ、というウワサを聞いてずっと観たいと思っていた。CSの東映チャンネルでは何度か放送があったようだし、都内の名画座でも上映があって静かな盛り上がりを見せていた怪作が、満を持してAmazonプライム・ビデオの「TOEI JUNK FILM」に登場。この件についてはTwitterでは1人くらいしか言及がないのだが、別に満を持してないだろうのか……?

 七つの顔を持つ男・多羅尾伴内シリーズで見せた、現代劇の探偵ものであるにもかかわらず時代劇のセリフ回しが全然抜けてない御大の演技が好きな方にはたまらないと思うのだが、ブラジル帰り設定のおかげで、この魅力がさらにすごいことになっている。おまけに超濃厚なキャラクターは彼一人ではない。進藤英太郎演じるゴールドラッシュの熊吉という強力なライバルがおり、おじさんが2人して「オーケー」「カモーン」「レッツゴー」などと始終景気よく叫びまくる。知ってる単語言ってるだけやろそれ! その点、若手の江原真二郎競争する暴走機関車と化した大御所2人を落ち着かせるツッコミ役のような役どころだが、彼の役名とてスペードのジャックであるし、とにかくまともな人間が梅宮辰夫と三田佳子しかいない。コントみたいな映画というのは確かにその通りで、話がどこへ転んでいくのかわからないある種の緊張感が持てなければ、最後までイカれた連中のゆるいやりとりを見せられ続けて退屈極まりない映画になってしまうかもしれない。

 とはいえ、クライマックスは裏切り、だまし討ち、どんでん返しという活劇の面白さがこれでもかと詰め込まれていて、誠に愉快痛快大傑作。江原真二郎のスタイルが良く、拳銃の構えがやたらとカッコいいので、それだけで「やりますねぇ!」と声をかけたくなってしまった。久保菜穂子演じる中国人秘書も、チャイナドレスに拳銃という最高の組み合わせを満喫させてくれるし(月形龍之介がときどき彼女を「フイチン」と呼んでいたのはどういうことだろう。撮影の途中で役名が変わってしまったのだろうか)、どんな役であろうと役者はしっかり輝かせるのはさすが東映時代劇の社風という気がする。

 こんなに面白いこの映画がソフト化されないのはやはり御大が狂言キチガイのふりをして精神病院への潜入する場面のせいかと思われる。『君よ憤怒の河を渉れ』の高倉健だって似たようなことをして危機を脱していたので問題はないと思うが、やっぱり檻の中に由利徹南利明トニー谷がいたりして、面白おかしくなっちゃってるのが問題なんだろうか。なんにせよ東映さん、いつでも見られるようにしてくれてありがとうございます。元気がなくなったらまた観ます。ちなみに『ヒマラヤ無宿 心臓破りの野郎ども』という片岡・進藤・江原の3人が揃う姉妹編もあり、こちらも「TOEI JUNK FILM」で視聴可能。ありがたやありがたや……